全員が赤面しながら、両手で一生懸命に体を隠す。二本しかない腕では、どうしても胸とアソコまでしか守り切れずに、お尻だけは四人とも無防備だ。
「あは……どうしよう……」
雛菜が完全に引き攣っている。
「いや、どうするって……」
円香も焦っていた。
早く何とかしなければ、このままではまずい危機感に晒されたような感情をそれぞれ抱き、周囲の様子を気にかける。
周りで遊ぶ一般人はエキストラが半数以上を占めている。プールサイドにいるスタッフ達は、カメラを担いだ状態で、四人が上がって来るのを今か今かと待ち侘びている。
気づいてみれば、あの仕掛け人の女児以外は男ばかりだ。
女性がいないことはないが、男の比率の方があまりにも高い。
水から出たくない。
水面の下に隠しているうちは見えにくいのに、プールサイドに上がってしまえば、何の誤魔化しも効かなくなる。だから出たくないのが、四人の抱く共通の思いである。
しかし、ずっと水中にいることはできない。
いつまでもこうしていないで、いずれは動く必要があるとは思っていながら、なかなか動き出す決意ができない。
その時だった。
「あ、あれ? 何か、周りが……」
真っ先に気づくのは小糸であった。
「あー……。まずいね」
そして透も顔の赤らみを強め、身を隠す腕力には、ぎゅっとより一層の力を込める。
エキストラの男という男達が、防水機能があってのことか、スマートフォンを片手に迫って来たのだ。
今のところ五人ほど、アイドル達の周囲を取り囲み、明らかに人にカメラを向けて、シャッターチャンスを狙っている。中には水中に潜り込み、水の中から撮ろうとしてくる男までいて、いよいよ動き出すしかなくなった。
きっと撮影自由なのだ。
四人の誰も、自分の裸を撮らせる許可などしていないのに、スタッフの方が許可を出し、撮影を自由にしている。全裸で身を固めている四人は今、どうにかしてカメラを逃れ、その上で更衣室まで逃げ切る必要が出て来たのだ。
……無理に決まっている。
誰一人にも、尻すら見せずに済ませるのは不可能だ。
「固まっていこ」
円香が言うと、残る三人は一斉に頷いた。
体をくっつけ合うことで、少しでも見える面積を減らしながら行くしかない。そんな作戦で四人は固まり、身体を押しつけ合うようにして動くが、プールサイドへ着いた時、やはり覚悟を決める必要があると気づいてしまう。
(意地でも撮る気? 何? 動画?)
憤りすら胸に抱え、円香は肩越しに振り向く。
そこに並ぶ五人の男達は、ずらりと横一列に並び立ち、それぞれのスマートフォンを構えている。四人がプールサイドに上がるのを、今か今かと待ち侘びているわけだ。
体をくっつけ合ったり、抱き合いながら上がることは出来ない。
上がる時には、少なからず尻を後ろに突き出すことになる。手を使う必要もあるので、隠している部分を一時的には解放しなくてはならない。
その上でプールサイドを見てみれば、そちらにもアイドル達にカメラを向け、撮ろう撮ろうとしてくる男達が横並びに立っていた。
そして撮影スタッフも、横から映そうと膝を突き、担いだカメラを構えている。その位置からは、ちょうど横乳が映ることになるだろう。
「い、行くしかないかなー……」
雛菜の声が震えている。
「あー……。だね」
そう答える透の顔にも、心底嫌そうなものが滲み出ている。
「それじゃあ、せーので……」
と、小糸が言った時、四人は合図と共に意を決し、一斉にプールサイドに上がり始めた。壁をよじ登るようにして這い上がり、少しでも素早く自ら出ると、一時的にでも解放していた恥部をすぐさま隠し直した。
四人は走った。
慌てふためくような滑稽な足取りで、一秒でも早く更衣室へ逃げ込もうと、両手で隠しながら走っていた。
視聴者からすれば、それは面白おかしい映像となる。
きちんとしたフォームとは程遠い、おかしな走り方を真っ赤な顔で行うのは、本人達にとってはどれだけ切実でも、傍から見れば良い娯楽となってしまう。
しかも、更衣室に駆け込んでなお、四人にはまだ安心が与えられないのだ。
服がなかった。
ロッカーを開いた中に、確かに脱いだはずの服がなく、バッグだけが残されている。あえて私物を残してあるのが、決して人のロッカーと間違えているわけでないことを物語っていた。
こんなもの、スタッフの仕業に決まっていた。
「そんな……」
小糸が悲痛の顔を浮かべる。
「いつまで、続くのかなー……」
雛菜の口からも、そんな言葉が出て来ていた。
撮影スタッフ達が雪崩れ込む。
女子更衣室だというのに、お構い無しの男という男がずかずかと踏み込んで、人の羞恥心など気にも留めずにカメラを回す。撮られかねない危機感と、異性に包囲される恥ずかしさに、四人はまた一斉に、改めて両手で恥部を隠していた。
「はーい。それでは一人ずつ順番に、気をつけをしていきましょうかー!」
そこにマイクを握った司会者。
四人にとって、それはもはや悪役の登場だった。撮影スタッフという名の戦闘員を従える幹部や怪人のようなポジションに、四人からすれば冗談でなく本気でそう見え始めていた。
そして、これらプールでの映像が利用され、エロバラエティのために使われるのは数日後のこと。
四人はその日、スタジオに呼び寄せられ、改めて恥ずかしい思いを味わっていた。
そのスタジオにはもちろん司会者がマイクを握り、四人には番組の考える様々なゲームが試練として待ち受ける。ボールを投げて点を取るだの、クイズだのを経て、罰ゲームと称して一枚ずつ脱がされて、一人また一人と裸に近づく。
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